本書は経験学習(経験学習とは「経験を変換することを通して知識を創造するプロセス」を指す。(コルブ 1984)人間は直接・間接的に経験をする。学習とはその経験から自分なりの知を創造する営みである。) を各業界業種に焦点を当てながら、業務の中にある志向性や成長した経験を抽出し、体系的に整理することで、業界・業種の経験学習の越境性を証明しようとしている。 本書の主題として 「企業における熟達者は、いかに経験から学んでいるのか」 というものを立てている。この問いに対して、具体的には ① 学習を促す経験の長さと特性(第4章)(経験そのものの特性) ② 学習を方向づける信念の役割(第5章)(学習する個人の特性) ③ 学習を支える組織特性(第6章)(学習を促進する組織特性) という3点から仮説を立て、それぞれに対する調査を行いながら、仮説に対しての考察と論証を行っている。第I部では先行研究を整理した章で、「熟達化」と「経験」に対する研究がまとめられている。第II部では上記①〜③に対する研究結果がまとめられている。 ...